第26回『真のグローバル化』

2011年10月24日 三代目奮闘記

真のグローバル化 2011_10_24

イタリアの人工衛星メーカーからの初受注が決まった。商社、外資メーカーの日本支社等を通さずに海外から直接頂いた初めての受注が人工衛星部品なんて、数年前では想像さえできなかっただろう。出会いはパリ航空ショー。国際宇宙ステーションにも搭載されている人工衛星のコンポーネントを作っているメーカーだ。本連載の第15回で、サンプルを作ったところまで書いたが、その努力と熱意が実った。

 

未曾有のユーロ安。1ユーロ100円に迫る勢いだ。見積書を作るときも、これで本当に取れるのか?と不安になった。しかし、見積もり金額を提示すると、即日に注文を頂いた。イタリア人はのんびりしているかな?と勝手に思っていた自分を反省した。それにしても、決して安いとはいえない金額である。見た目が同じようなものを日本以外のアジアの国で作ったら、価格は5分の1と言われてしまう可能性もあった。イタリアのお客さまはしっかりと付加価値を見てくれたのだ。それは、スピードであったり、過去の実績であったり、日本自体が持つ信頼性、ブランドであるかもしれない。

 

由紀精密の海外展開の方針は、大量消費地、新興国に大きく打って出る事ではない。そういうことは苦手な零細製造業である。しかし、信頼性の高い製品を作る技術は、60年の実績でも証明されている。この技術の価値を正当に評価してくれるお客さまに適正な価格で製品を作っていきたい。日本国内はもちろん、ある時は米国かもしれない、ある時はフランス、ドイツかもしれない。韓国、中国にも素晴らしい技術を持っている会社はたくさんある。

 

関ものづくり研究所代表の関伸一さんは「メード・イン・ジャパンを海外から『高くても良い、売って下さい!』と言わせるのが真のグローバル戦略」とおっしゃった。そういう製品を作るのを目標として、製造技術の改善、開発に常に全力を出しながら、世界から高くても必要とされるものは何か?を常に感じていなければいけないだろう。

 

イタリアの図面を見て思った事は、例えイタリア語であれ、ものづくりは共通言語。ちょっと辞書を使えば、作りたいものが何で、どこが重要か?すぐに分かりあえる。そういう意味では外国語が全く話せなくても、職人は海外の職人と製品を通じてコミュニケーションができるのである。良い製品は通貨よりもよっぽど普遍的な価値があると思っている。この普遍的な価値を作り出せる、特色のある技術をもった零細製造業は、本来は世界で通用するグローバル企業と言えるだろう。そうなれる事を実証するため、由紀精密は多少のリスクは恐れず、どんどん海外に良いものをプレゼンテーションしていきたい。

(日刊工業新聞 2011年10月24日付オピニオン面に掲載)

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