第39回『コマ大会優勝』

2012年2月20日 三代目奮闘記

コマ大会優勝  2012_02_20

2月2日、パシフィコ横浜。展示会会場の一角で、100人近い観衆と無数の報道陣のカメラに囲まれ、全日本製造業コマ大戦の決勝戦が始まった。全国の町工場が自作の喧嘩コマで戦うこの大会、由紀精密の投げ手は右のエース高木。ピアノで鍛えた指先から、正確なブレのない回転が銅タングステン合金製の重量級コマに伝えられる。対するはシンプルだがバランスの整ったコマで、強豪ひしめくトーナメントを勝ち抜いてきた群馬県のシンコウギヤー・カキタ製作所連合だ。ルールは小さな土俵の中で長く回っていた方が勝ち。2連勝すると勝負が決まる。

 

お互い、なめらかな外径形状を持っているコマで、激しくぶつかり合うことなく、中央付近で止まっているかのように安定して回り続ける。由紀精密のコマは、ぶつかることで重さを生かし相手の回転エネルギーを減らすことを重視。単純に長く回る性能は少し犠牲にした。お互いに触れ合わない状態での持久戦になると分が悪い。なんとか初戦は勝ったものの、2戦目は先に倒れ、次に負けたら敗退が決まる3戦目。会場は異様な熱気に包まれる。投げ手の緊張もピークに。優勝候補と言われた由紀精密が負けるわけにはいかない。最後は、ギリギリの判定で由紀精密が2連勝し大会の幕は閉じた。

 

この大会はメディアで話題になり、由紀精密がBranchのウェブサイトで販売しているSEIMITSU-COMAにも、あっという間に数百個の単位で注文が入ってくる。このコマは大戦用とは別で、由紀精密がパリ航空ショーに出展する際にノベルティーとして作ったものを商品化した。ウェブサイトで購入してくださったお客さまは、ツイッターなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)で動画をアップする。それを見た方がまた購入する。この連鎖反応がどんどん進み、大会が終わって1週間以上たった今も、まだ日に100個以上の売り上げがある。まさに、商品がヒットする瞬間を見ることができた。

 

SNSに投稿されたコメントを見ると、精密に削り出したコマを高く評価していただいいて、大変うれしい。一つひとつが別々のお客さまに評価されるとなると、品質管理にも気合が入る。今回の経験で、中小製造業が個人向けに製品を販売する際のさまざまな要素を体験することができた。ミナロの緑川社長率いる心技隊という企業連携によるコマ大戦というイベントの企画・実行、それをウェブを通じて発信する広報能力、さらにBranchでの個人顧客向けの販売対応、ひとつでも欠けたらこのヒットは生まれなかっただろう。今回の学びを生かし、さらなるヒットを生み出すべく、勢いのある中小製造業の仲間たちと次の戦略を考えていきたい。

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(日刊工業新聞 2月20日付オピニオン面に掲載)

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