第43回『ビジネスの醍醐味』

2012年3月19日 三代目奮闘記

ビジネスの醍醐味 2012_03_19

ソフトウエアのテスト事業を主に手がけるシフトが、三井物産をはじめとする数社から4億7000万円を超える第三者割当増資をしたというニュースが入ってきた。このシフトの社長、丹下大は私が以前勤めていた会社、インクスの同期である。彼はインクスを退社後、シフトを起業。2005年の9月だった。私が由紀精密に入る1年前である。

 

コンサルティング業務からスタートし、さまざまなビジネスにチャレンジ。失敗したものももちろんあるだろうが、数年前に始めたソフトウエアテストのジャンルで突出した成果を挙げる事に成功した。 われわれが一緒に働いていた当時、インクスはITによって第2の産業革命を起こそうと、本気で奮闘していた。就職氷河期と言われた年度ではあったが、あえて大手メーカーを選ばず、まだ知名度も低いベンチャー企業であったインクスに入ってきた同期は”変わって”いる。

 

彼らは、人生初めての仕事がインクスであり、そこでは世界一にチャレンジすることが当たり前。入社2年目でも大企業の役員クラスにプレゼンテーションすることに違和感を覚えなかった。丹下だけではなく、00年に同期入社した仲間は今でもお互いにいい刺激になっている。多くが今ではインクスを卒業してさまざまな道に進んでいる。しかし彼らに共通するのは、今でもインクスに感謝し、最初の仕事に大変な誇りを持っていることだ。

 

丹下はまた奇妙なサービスを考えている。携帯電話に足りないものは何か、と彼は問う。答えは「香り」。電波で伝えられる情報だけでなく、香りを相手に伝えることで、視覚、聴覚だけでなく嗅覚を刺激する。さすがに、香りという「物質」を介して伝わるものを遠隔の相手に電波だけで伝えるのは不可能だ。香りのカプセルをコンビニエンスストアで購入し、香りを送りたい相手にプレゼントする。香りのカプセルは携帯電話に装着できる。ただの「おやすみ」のメールが絵文字を使う事で表情を持った。特別な着信音を付ける事で語りかけるようになった。今度はリラックスできる香りが付く。 携帯電話の端末に香りを発生させる装置を付けることは、まだ誰も考えていなかった。特許の取得にも成功した。全国のコンビニで香りのカプセルが一日1本売れれば、70億円のビジネスになるという。

 

「着メロ」ではなく「着パフ」。着パフュームだそうだ。

 

スペインの世界的な携帯端末の展示会では大変な評判を集めた。技術的にはいろいろな課題があるが、彼には乗り越えてものにできるパワーがある。新しいコンセプトを考えて実行する、新たなマーケットを創出する、これこそまさにビジネスの醍醐(だいご)味である。今後の展開が楽しみだ。

20120319

(日刊工業新聞 3月19日付オピニオン面に掲載)

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