第52回『開発部の使命』

2012年6月4日 三代目奮闘記

開発部の使命 2012_06_04

由紀精密が金属の切削加工を始めて63年になる。切削加工一筋でやってきた。開発部を立ち上げたのが6年前。筆者や前職で同僚だった社員が、研究開発に携わっていたことが設置のきっかけの一つだが、他にも二つの理由がある。

 

一つは開発的な思考を持ち、お客さまへの納期短縮・コストダウン・品質向上のための提案をより積極的に行うため。部品加工業とはいえ、与えられた仕事だけやっていては競争力を出すのが難しい。もうひとつは、部品の図面が書かれる前段階からお客さまと関わりを持ち、代わって図面を描く、あるいは作図のアドバイスをするため。その図面で作る部品は、後の製造工程があらかじめ検討されているので、最終的にコストダウンと納期短縮につながる。 たとえ量産加工の受注ができなくても、設計と試作、あるいは実験設備、治工具など付加価値の高い領域で仕事をしたいという思いが強かった。この方向性は当たり、現在、多い月では全売り上げの半分近くを開発部が関わる仕事が占めている。

 

開発部の売り上げが順調に伸びている理由に、リピート率の高さが挙げられる。作り上げた製品が評価されているということで、とてもありがたいことである。また、組織がコンパクトなため、当社で半日打ち合わせすれば、設計から製造の完成の形が見えるところまで話が進む。組織がコンパクトなことはコストが安いことにもつながる。

 

設計から入り込みたい、製造の根元から関わりたいという思いは、最近では学生さんや加工を専門としない研究者の方々への教育にもつながっている。3次元CADの有効な利用方法、どんな加工方法があって、どういう形が早くてコストがかからないか。切削に限らず加工全般の知識を、一緒にプロジェクトを進めながらどんどん吸収してもらう。技術の流出とは全く思わない。高いレベルの設計が、高い加工技術の必要性を生み出し、最終的に仕事が増える。

 

由紀精密の仕事だけでなく、高い加工技術を求める設計者が増えることで、ひいては日本の製造業の仕事も増えることになるだろう。 もちろん、不必要に難しく設計するということではない。加工技術を知っていれば、ちょっとした工夫でより良いものが出来上がる、ということを知っていただきたい。製造が困難な図面を書き、ただ価格の問題だけで海外に発注し、希望通りのものが出来上がらない−と後で苦戦する。その構図が至る所に見られるのが痛ましい。

 

実は、よく考えられた図面は安く加工できる。そして加工している方も利益が出る。由紀精密開発部はここのところを意識して、良い部品をどんどん世の中に送り出したい。

20120604(日刊工業新聞 6月4日付オピニオン面に掲載)

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