第8回『良い人材は「集まる」』

2011年5月23日 三代目奮闘記

良い人材は「集まる」 2011_05_23

中小企業に良い人材が集まらない。よく聞く言葉である。確かに、自分が新卒で就職活動をしていたとき、中小町工場は全く選択肢に入っていなかった。そもそも自分の生まれが町工場で、身近なだけに一層ここで働くとは思ってもいなかった。当時、私が憧れた働く姿から大きく離れていた。しかし、今の由紀精密をみると、ありがたいことに、とても優秀で魅力的な社員が集まっている。学歴がよければ優秀とは限らないわけだが、大手メーカーに入って当然と思われる大学・大学院出身の若手が油まみれで働いている。

 

彼らはなぜ由紀精密に集まったか? 無理やり他社から引き抜いたわけではない。給与は安い。業績が悪いとボーナスも出ない。自慢できるようなきれいなオフィスもなく、労働環境は至って普通の町工場レベルである。彼らのモチベーションになっているのは、自分が会社を変えられる、という責任感と達成感、そして、将来の夢であろう。会社の規模が大きくなると、自分一人の力で会社の業績を変えるのは難しい。由紀精密は20人の規模である。一人の社員が5%の役割を担う。一人の頑張りやアイデアで会社全体が大きく変わり、逆に、一人が機能しないと全体の負担となって数%の利益などあっという間に吹き飛んでしまう。

 

よく、他の町工場の経営者から、どうやってよい人材を集めるか?と質問を受ける。人材募集や採用方法のテクニックを聞かれているのだが、答えは単純。その「よい人材」から見て、魅力的な会社であることが全てである。どんなに採用活動自体に力を入れても、採用した人間から見て魅力がなければ結局、長続きしないだろう。答えは単純だが、魅力的な会社であり続けるのは並大抵なことではない。私から見て大変魅力的な中小製造業が、その魅力をうまく伝えられていないことも多い。

 

大企業のように派手な宣伝広告はできない。飛び抜けた高い給与も払えないし、長い休みを与えることも現実的でない。その代わり、小さい会社だからこそできることもある。経営者は、自分の会社がこうなりたいという夢を語り、社員一人ひとりの重要性を説明し、彼らのアウトプットを評価し、会社の成長と連結させる。これは絶対に欠かせないことだと、自分に言い聞かせている。社員が魅力を持ってくれれば、その魅力は外にも自然に伝わり、結果として良い社員が集まってくる。

 

来月、フランスで開催されるパリエアショーに出展する。実務部隊とは別に、希望する社員は一緒に見学に行く事にした。正社員の半分以上が一緒にパリに行く事になる。いろいろな所に負担が来て大変な事態が想定される。しかし、由紀精密の一つの夢を社員で共有したい。その思いが実現すれば、1週間の穴を埋めるのはたやすいことだ。

20110523

(日刊工業新聞 2011年5月23日付オピニオン面に掲載)

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