第88回『学生を呼び込め』

2013年4月1日 三代目奮闘記

学生を呼び込め 2013_03_25

伊藤烈司くんは大学1年生の時にアルバイトとしてやってきた。彼のおばあさんは、かつて由紀精密でパートタイマーとして働いていた方で、筆者も幼い頃からお世話になっている。彼は銀行員である叔父の紹介でこの小さな由紀精密の門をたたいた。学生時代の筆者と違い、真面目に授業に通う傍ら、週1回、休み中は週に数回、開発部の仕事をこなしている。

 

大学生のアルバイト先として一般的なのは、コンビニエンスストアや飲食店、時給が良いものでは家庭教師や塾の講師。こういった仕事はマニュアルがあったり、決まった工程がある中での業務となる。しかし、由紀精密の、とくに開発部の仕事は毎回与えられる作業が異なる。お客様に発送する複雑な形状の製品の梱包だったり、3次元CADを使う設計作業であったり。社内のレイアウト変更時には3次元のレイアウト図作成から重量棚の解体、移動までこなす。指示する側がこれらの作業を一から教えていたら、仕事が進まない。本人の素早い理解力と実行力、問題解決力が問われる事になる。

 

ある意味、アルバイトとしての仕事のレベルを大きく超えているかもしれない。伊藤くんはいつも黙々と業務をこなす。あれ、伊藤くんはどこ? と探すと、製造現場の工作機械の前で納期が迫った製品の段取り替え作業をしていたりする。少人数で多くの作業を並列でこなさねばならない由紀精密の開発部では、彼は非常に貴重な存在だ。

 

さて、高校生や大学生がアルバイト先を探す時に、中小製造業というのは選択肢にあるだろうか。少なくとも自分が学生の時には目にとまらなかった。それでは、中小製造業に勤め、学生の子どもを持つ親は、自分の子にアルバイト先として中小製造業を勧めるだろうか。

 

誰もが名前を知っているファストフード店やコーヒーショップといった人気あるアルバイト先での同年代の仲間とのつながりも学生の醍醐味だろう。しかし、吸収力も適合力も高い学生時代に、社会の縮図とも言える中小企業の中で、さまざまな業務を体験することも、非常にためになると思う。

 

企業側としても、若い学生が生き生きと働ける場へと意識的に改善していく必要がある。製造業は他の業界と比べて、学生を引きつけるための活動が遅れていると感じる。現在、就職できない学生の割合が深刻なほど高いという。彼らの就職先として、中小製造業が見えているだろうか。

 

アルバイト、インターン(就業体験)、工場見学と、学生に会社を見てもらう機会を持つ事はもっとできる。今後も若い力に中小製造業を体験してもらえるチャンスを作っていきたい。

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(日刊工業新聞 4月1日付オピニオン面に掲載)

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