第9回『強み伸ばす企業連携』

2011年5月30日 三代目奮闘記

強み伸ばす企業連携 2011_05_30

中小町工場で働き始めて強く感じたことの一つに、「企業連携」の大切さがある。規模が小さい会社ほど自社だけの技術で完成する部品は限られる。「切削加工」という仕事の中でも、自社でできる製品の範囲がいかに狭いか痛感する。依頼された仕事は断りたくない。対応を考えるなかで、自社に無い技術を持った多くの会社にめぐり会えた。現在、由紀精密が仕事を依頼している協力会社は、50社を超える。ただの外注先ではなく、この技術ならば安心して任せられると判断した魅力的な協力会社が多い。

 

その中でも、特に相互のやりとりが多く、経営者同士のつながりも強いのが、CmonoC(茅ケ崎ものづくりサークル)という茅ケ崎市内の数人から20人規模の町工場7社の連携だ。企業連携というと、共同受注したり、窓口を置いたりと、みんなで集まって仕事を獲得しようとする動きも多いが、我々の連携はそういう事はしていない。どちらかというと、各社が自社のブランドで積極的に仕事を集め、責任を持って連携企業に協力を依頼する。それでは通常の下請け関係と変わらない、ということになるが、お互いの技術レベルを深く理解しあい、経営状況、仕事の混み具合も把握しているために、あたかも自社の別工場のような感覚で仕事を依頼できている。

 

共同の窓口は置かない。「いろいろできます」と言ってはみても、どこで作られているか実態が分かりにくいのでは、発注側としては仕事を出しにくいだろう。特にトレーサビリティーを重視する業界ではそうであろう。また、窓口業務にかかる間接コストも懸念している。中小企業の連携というと、弱いものは集まって強い敵と戦おう、と捉えられがちだが、そうではない。光っている中小企業が各社の強みをもっと伸ばしていこう、という事である。

 

直接的な仕事以外でも、連携のメリットが出てきている。同じ規模の会社の経営者同士が、うまくいったこと、失敗したことを共有し、全体の経営レベルを上げていく。また、連携先が強い技術は追いかけず、自社特有の技術を伸ばして連携全体の技術レベル・付加価値を上げていく。高価な測定設備も連携先で持っていないものを選ぶ事で、1社ではとても集められないレベルの高い測定器をそろえられる。実際に由紀精密で今年2台の工作機械を導入した際には、連携先を意識して自社の強いところをさらに伸ばす選択をした。

 

今年4月には、この連携で合同入社式を行った。1社1ー3人ずつの新人も、全体で11人になった。1社ではとてもできないしっかりとした入社式を、茅ケ崎市、商工会議所のバックアップで行えた。新入社員もよいスタートが切れたと思う。
20110530
(日刊工業新聞 2011年5月30日付オピニオン面に掲載)

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