第95回『チョコレート型の設計補助ツール』

2013年6月17日 三代目奮闘記

チョコレート型の設計補助ツール 2013_06_17

見た目はヨーロッパ風の包装に包まれたチョコレート。色も形もチョコレートそのもの。ただ、どうやら食べられないようだ。包装をあけて見ると、チョコレートの角が少し溶けたように丸くなっている。さらによく見ると、丸みがブロックごとに異なる。手で触るとよくわかる。これは、Resiina(レジーナ)という、ブランチと町工場の連携で生み出された新しい商品である。

 

さかのぼって、2012年8月。渋谷のヒカリエで、ブランチと町工場展という展示を行った。ここでは、工場デザイナー前川曜率いるブランチとそのデザイナー集団、さらにモノづくりにこだわりをもつ町工場が集まり、これまで世の中に生み出してきた製品を展示した。そこで、由紀精密のデザインエンジニアの畑中元秀と、射出成形の金型を作るミヨシの杉山耕治社長が出会った。

 

デザイナー、あるいは設計者が、何かを作る時、製品の角にどのくらいの丸み、あるいは面取りを付けたら良いか。これは、いつも悩むポイントだ。実際サンプルが手元にあると参考になってとても良い。世の中にこういった丸み、面取りのサンプルは存在はするが、高価でデザイン的に素っ気ないものが多い。実際に杉山社長がもっていた丸みのついたサンプルを畑中が見て、思いついたのがチョコレート。

 

畑中は思いついたこのアイデアを早速スケッチブックに書きとどめる。杉山社長はそれを元にプラスチックを成形する金型を設計。パッケージデザインは、そのヒカリエの展示会に参加していたデザイナーの野末美香である。全体のとりまとめを前川が行いブランチストアでウェブ販売する。

 

町工場、デザイナーの連携により、レジーナは生まれた。実際は12年8月にアイデアが生まれてから10カ月かかった。デザインも妥協を許さず、何度も設計図を書き直す。金型を製造後、射出成形で発生するヒケ(樹脂が固まる際に収縮して、製品がへこむ)問題にも悩まされた。杉山社長は思い切って、金型を一から作り直した。射出成形の金型は、1型作るのに安くても数十万円かかる。

 

そこまでこだわってレジーナがようやく世の中に出る。3440円で販売されるおいしそうな製品。見ているだけで楽しいし、机の上におきたくなる。性能も非常に優れ、何かを設計する時に手放せないだろう。モノづくりは本当に楽しい。

 

しかし、ただの楽しみでなく、ちゃんと売れるもの、品質の高いものを作るためには、妥協を許さない自分に対する厳しさと強いこだわりが必要だ。これからこの商品もウェブを中心に大きくプロモーションを行う。お金をかけず工夫次第で多くの方に見てもらえる時代である。今後、実際に手に取っていただくお客様の反応が楽しみだ。
20130617
(日刊工業新聞 6月17日付オピニオン面に掲載)

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