由紀精密では、従来取得していたISO9001に基づく品質管理システムによる品質管理を行ってきました。
2010年1月にJIS Q 9100を認証取得し、航空宇宙防衛産業で求められるより高度な品質を常に追求する姿勢を失わない活動を日々心がけております。
一方で、その「JIS Q 9100って一体なんですか?」ということも良く質問されます。
JIS Q 9100とは、ISO9001に航空宇宙防衛産業における特有要求事項を追加した品質マネジメントのJIS規格です。
また、JIS規格ではありますが、米国ではAS9100、欧州ではEN9100という互換規格があり、相互認証されています。(下図参照。図をクリックすると拡大図が表示されます。)
JIS Q 9100の認証を取得するということは、即ち航空・宇宙・防衛産業界における品質マネジメントシステムの国際的な認証を得たものとして取り扱われることになるのです。
前項に記述しましたが、JIS Q 9100はISO9001を元としてそれに航空・宇宙・防衛産業における特有要求事項を追加して構成されています。
JIS の規格書を取り寄せて要求事項を取り寄せるとさらにわかりやすいことに、ISO9001の要求事項はすべて含まれています。これに斜体でJIS Q 9100の追加要求事項が記述されているのです。
具体的に追加されている項目は「キー特性」「形態管理」などいくつかキーワードが挙げられますが下図にてまとめてありますのでクリックして拡大図を参照ください。
この図は由紀精密が9100規格を取得当時にまとめたものであるため、JIS Q 9100:2004 (2004年度版9100規格) とISO9001:2000 (2000年版9001規格) に基づいた資料となっております。
これに加えて、最新の2009年度版との相違を下図にまとめてありますので、宜しければこちらもご覧下さい。
追加されている要求事項の個別の説明に関しては、別途、追加コンテンツを作成するなど致します。
JIS Q 9100取得のメリットには次のようなものが挙げられます。
それぞれに関して以下に詳細を記述します。
1.世界共通の規格
前項に書かれてある通り、アメリカ、ヨーロッパの規格と互換性があります。
もう少しローカルなところで最近勢いのあるアジア/パシフィック地域に関しては日本が規格の取りまとめをしています。今後とも認証取得が航空・宇宙・防衛産業界での世界共通の品質管理基準を満たすことと同義であり続けるものとして考えられています。
2.世界に取得が公開される
取得すると自動的に9100規格を取りまとめているIAQG(International Aerospace Quality Group)の「OASIS」という登録企業データベースに登録されます。
(※下記は弊社の例。クリックすると拡大図が表示されます。)
OASISを運営するIAQGの会員には下図のように世界的な大企業が名を連ねています。
ボーイングやエアバスなど、世界のプライムメーカーに対して、自社の製品やサービスの優秀性をアピールできます。また、国内的にもMRJ開発などに際してサプライチェーンの拡がりが見られます。
3.ISO9001の取得も受けたことになる
9001の拡張要求であるので当然ではありますが、9001適合に関しても登録証にも記載されます。
費用の相違に関しては後述します。
4.希少性、先行者利益
(2010年の記述時の時点では)希少性があり、取得表明だけで記事になることもあり得ます。
企業名を世に広め、高品質企業のイメージを形成するチャンスにもなります。
5.取引条件として掲げる企業の増加
航空関連各社が取引条件として採用しています。また、開発機関などで品質要求事項として採用される動きも活発です。
【具体的な状況(SJAC2009年4月度会報より)】
取得要求
(取引には取得が必須)ボーイング、エアバス、ロールスロイス、三菱飛行機 取得推奨 IHI、川崎重工、富士重工、三菱重工 品質要求として採用 NASA、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、防衛庁
取得が必須の場合には取引を行っている企業に取得要請をし、それでも未取得の企業に関しては転注の対象となります。
航空・宇宙・防衛産業各社と取引を既に行っており、9100規格の取得をしていない企業にはリスクとなりますが、これらの企業との取引がないがこれから規格取得を目指す企業においては大きなチャンスとなります。
一方、デメリットとしては次のようなものが挙げられます。
1.管理工数の増大
ISO9001や14001など他の規格の認証取得を目指す企業も同様の悩みを抱えることはあります。
由紀精密でISO9001、JIS Q 9100と段階を踏んで認証取得する際に徹底したことは
- 最初に自社の身の丈に合った管理レベルを考えて仕組みづくりをする
- それで規格要求に足りないところは出来る方法を考える
ということです。
最初にISO9001取得の際には、規格の読み方やそこで規格の解釈を教わって出来た品質マニュアルのチェックなど、スポットでコンサルタントをお願いしましたが、その後はコンサルタントなしでJIS Q 9100取得まで自社で行いました。
コンサルの入った初期にも仕組みそのものに関しては社内全員で考えて認証取得を行ったため、無理のない運用ができていました。
それでも規格要求事項の中にはどうしても新しくやらないといけない上に、「この人数でどうやったらそこまで出来るの?」と頭を抱えさせるようなことも出てきます。(例えばJIS Q 9100では形態管理の方法など…)
由紀精密ではうまくシステム化を組み合わせることで社員を増やすことなく、管理コストを抑えることに成功しています。
(システム構築の方法もやり方次第でコストをほとんどかけずにすることはできます。)システム化の話に関しても別途、別コンテンツ作成の機会を作って説明させて頂きます。
2.取得にもコストがかかる
取得時コストに関しては製品価格と品質のバランスに関してどう考えるかなど、様々な判断もあります。
由紀精密では既にISO9001を取得していましたので、その継続と比べて「JIS Q 9100の取得は得なのか?」ということを考えました。
【日本国内ISO9001/JIS Q 9100取得企業数】
ISO9001(2010/7/20現在) 38292 JIS Q 9100(2009年) 231
由紀精密では登録企業が何万社もいる現状ではISO9001を継続するよりも、もう少し頑張ってJIS Q 9100を取得するメリットの方が大きいという判断をしました。
3.顧客の期待値が上がる
担当者レベルから言うと、お客様の考える「由紀精密はこうなんだろう」というハードルが上がるのは大変な面もあります。
しかしながら、最近の代表的なところとしてはRoHS→REACHの使用物質管理など、何もしていなくても顧客要求は高まる傾向にあります。
先回りして管理レベルを上げてゆこうという判断をして由紀精密はJIS Q 9100取得の取り組みを始めました。
4.参入障壁が高い?
規格要求事項を見るとわかりますが、工程や工具、NCプログラムにまで変更に関する規定があります。
一度流れ始めた仕事はその部品や組み込まれるユニットが乗る最終製品が飛び続ける限り流れ続けます。サプライヤの変更にも工程変更の手続きは必要ですが、一度取引が始まれば転注のリスクも非常に低いと言えます。
取得数増加の段階ではありますが、まだまだ取得企業は少なく、取得することで先行者利益を勝ち取る可能性は大いにあります。
参考リンク
→「会員一覧」協賛メンバーに由紀精密の社名も記載されています。