2012.3.26
三代目奮闘記
第44回『ウェブサイトの波紋』
ウェブサイトの波紋 2012_03_26
由紀精密の公式ホームページとは別に「切削加工.net」というページを立ち上げてからもうすぐ4年がたつ。グーグル、ヤフーでの「切削加工」キーワード検索では1位表示が定着してきた。この効果は絶大で、常に新しいお客さまからの問い合わせが続き、営業社員がいない由紀精密では大変な存在価値である。
ウェブ戦略の考え方については、本連載の第18回で書かせていただいたが、実はこのウェブサイトから予想外のアウトプットがあった。 ある出版社からの電話で、技術書のシリーズ本の切削加工のジャンルを執筆してくれる著者を探しているということだった。切削加工.netの内容は、外部サイトへのリンクを集めているわけではなく、すべての内容を私自身の経験の中から書いた。その分、その道何十年のベテランしか分からないような深い内容はないが、切削加工に初めて取りかかる人にはわかりやすい内容になっていると思う。その点が出版社の担当者から評価されたようである。
私が切削加工の専門書を書くことは、それこそ老後のライフワークとして考えていたので、まさかこのタイミングでチャンスがもらえるとは思っていなかった。自信があったわけではないが、このチャンスを逃してはならない。会社のアピールにもなるはずだ。喜んで執筆させていただくことにした。
さて、本を書くという作業は、部分的には経験があるとはいえ、1冊まとめることはもちろん初めてだ。ここは一つのプロジェクトということで、まずはマインドマップを書き始めた。目次になりそうな項目をマインドマップで結びつけ、その内容をメモとして項目に貼付けていく。元々ウェブサイトにあるコンテンツだけでは、200ページ以上の本のページは全く埋まらない。 これだけの量を書くのは大変かと思っていたらむしろ逆で、どんどん書き込んでいったテキストを全部集めると、280ページを超える内容となった。ここまで3カ月くらいだっただろうか。実は、ここからが山であった。
書いた事が本になると思うと、間違ってはいないか、これ本当に読者に分かってもらえるか−。図書館に通い、山のように技術書を積み上げる。検証作業にここから半年以上費やすこととなった。もちろん、通常の仕事も止めるわけにはいかない。ようやく完成したのが、現場の即戦力シリーズ「すぐに使える精密切削加工」だ。現場の入門書として取っ付きやすいと評判で、継続的に売れているようである。
さらにもう一つ裏話がある。実はこの連載をスタートするきっかけとなったのも、この本だ。自ら起こしたアクションはいろいろなことに連鎖する。何もしないと何も起こらない。最近つくづく思う。
(日刊工業新聞 3月26日付オピニオン面に掲載)