第11回『会社の規模』

会社の規模 2011_06_20

会社の売り上げが順調に伸びていくとうれしいものである。売り上げを伸ばすには、仕事をいっぱい取ってくる必要がある。仕事をたくさん取るためには営業を強化し、その仕事を回せるように社員を増やし、設備を増やし、会社は大きくなる。会社経営が順調ならば、その会社の製品はシェアを伸ばし、独占するところまで大きくなれば、その製品の市場規模にその会社の売り上げが近づいていくだろう。

 

実際にはそこまで大きくなる会社はほとんどない。それどころか、日本の会社の99%以上が中小企業である。また、従業員が20人以下の会社が全体の90%を占める。由紀精密の従業員は20人。とても小さな会社だが、日本の会社の90%がそれより小さい事になる。

 

私がこの会社の経営を考えるようになってから、ずっと悩んでいる事の一つに「会社の規模」がある。小粒でもキラリと光る会社を目指したいが、いかに少数精鋭とはいえ、人数が少なすぎると会社の多様性、応用力に問題が出る。自由にクリエーティブな活動ができる社員を雇用しておくゆとりもない。

 

しかし、100人、1000人と従業員を増やしていったときに、はたしてその社員を継続的にやしなっていく安定した収入を得ることができるだろうか? 特に、研究開発向けの試作や付加価値の高い少量量産を売りにしている製造業では、安定してボリュームのある仕事が常にある状態には程遠い。由紀精密の場合、ある時点で受注している金額は、おおよそ1カ月の売り上げくらいしかない。1カ月以内の納期のものがほとんどである。航空機の部品等、一部の継続的な仕事は、かなり長いスパンで受注しているが、それが全てとはなかなかいかない。同じ製造業でも自動車部品業界とはかなり様子が違う。

 

これは、先が見えない中での経営ということになるかといえば、あまりそう考えてはいない。逆に、非常にエキサイティングでやりがいはある。たとえ、一部の仕事を海外に奪われたとしても、それをリカバリーするための時間はかからない。大不況、天災などの場合も同じである。規模の小ささを生かして、ダイナミックにかじを切り、社員一丸で困難も乗り越える。

 

現在、まだ明確な答えは無いが、一つの適正規模として、20-30人程度の会社は、組織としての運営を行うために必要十分であり、小回りを利かせてさまざまな外乱をすり抜けるのにちょうど良いと感じるようになってきた。由紀精密は海外でも同じようなビジネスモデルで事業を展開したいと考えている。その時どうなるかはまだ正直わからないが、しっかりとまわりを見ながら適切な会社の規模を考えていこうと思う。

20110620

(日刊工業新聞 2011年6月20日付オピニオン面に掲載)