第91回『ウェブ会議』

ウェブ会議 2013_04_29
7時、米国、国内2カ所との3拠点間でのウェブ会議が終わった。お互い事前に送付してある資料を手元のパソコン(PC)で見ながら、用意していた質問を片付けた。手際よく進み、約1時間の会議は終了。早速、会議のメンバーを切り替えて、フォローアップの相談を始める。筆者が仕事を始めた13年前ではこんな便利な会議が無料でできるなんて考えられない事だ。

 

グーグルハングアウトというアプリケーションをよく使う。有名なスカイプでは有料となる多拠点での会議や、お互いのパソコンの画面共有が無料でできる。この効果は抜群で、わざわざ一カ所に集まって、プロジェクターをつけ資料を映して、という手間を考えると、社内にいる社員同士でも使ってみたくなる。

 

さらに、グーグルドライブでファイルを共有しておくと、一つのファイルをどこからでも編集する事ができる。誰がどこを編集しているか、という事もリアルタイムで見ることが可能。まさにクラウドサービスの恩恵を感じる。しかし、周りを見渡すと、まだこういった便利なツールを利用している人は少ない。

 

ある人はセキュリティーの問題を気にし、またある人はコミュニケーションは実際に足を運んで実際に会わなければ、と考えるかもしれない。  筆者も昔はテレビ会議に違和感があった。その違和感がどこからきているかと考えてみたが、音質・画質の悪さや、通信の途絶えが少なからず発生したりと、技術水準が未成熟だった点がある。しかし、現在、ほとんどの問題は解決している。自分のPCで一歩も動かず、ボタン一つで海外とつながる。どこでもドアを手に入れたようだ。

 

最近はスマートフォン(多機能携帯電話)をもっている人が増えている。スマートフォンを使えばPCとほとんど同じ機能が使えるので、さらに自由度が広がる。

 

視覚、聴覚は大半は遠隔地からも受け取れるという事になった。足りないところは、人間の五感で考えると、嗅覚、触覚、味覚となる。これらも、それぞれデータ化し遠隔地に転送し、再現する試みは進んでいる。例えば、あるものを3次元スキャナーで取り込んでデータを送り、3次元プリンターでプリントアウトする事で、時間の遅れは多少あるものの、こちらにある形を向こうで再現できる。動きの無いものであれば、触った感覚の一部も転送できる。

 

今後、この動きはどんどん進む。10年後は、あたかも自分がそこで一緒に会議している状態が作り出せるかもしれない。  筆者が実際に会うコミュニケーションを軽視しているわけではない。逆で、むしろ、会った時にしかできないような感動、発見、共感、これを得られるような出会いを心がけていきたい。

20130429

 

(日刊工業新聞 4月29日付オピニオン面に掲載)