2013.4.22
三代目奮闘記
第90回『行動する経営者』
行動する経営者 2013_04_22
4月11日、東京都大田区の大田区産業プラザPiOで試作市場2013という展示会が日刊工業新聞社主催で開かれた。このイベントの一つとして、3社の経営者がパネルディスカッションを行った。下町ボブスレープロジェクトのリーダーとして最近引っ張りだこである大田区の顔、マテリアルの細貝淳一社長。アイデア溢(あふ)れるオリジナルのiPhoneケースを企画から販売まで行い大ヒットさせたニットーの藤沢秀行社長。そして、由紀精密からは筆者が参加した。
筆者はこの2名とは中小企業経営の尊敬すべき先輩として数年前からお付き合いがあり、このパネルディスカッションは楽しみにしていた。控え室での事前打ち合わせ。久しぶりの再会に、打ち合わせそっちのけで話が盛り上がる。細貝社長とは下町ボブスレーが始まってからお会いするのは初めて。ストーリーの流れ、タイムラインの説明を頂くが、3人とも伝えたい事が多くあり、どの質問では誰が中心に回答、と一応重点的に話すところを決めた。
さあ本番。会場を見渡すと、ニュースによく出てくる、元気な経営者の皆さんの顔が並ぶ。立ち見が出る盛況ぶり。茅ヶ崎の町工場が大田区で話すとなると、アウェーな感じがするかと思ったが、全く逆で、全国から集まった仲間たちの中、ホームで試合をしているような暖かみを感じた。
3社の会社紹介、人の育て方、海外展開に対する考え、と話が進む。2社の社長の話に、聞き入ってしまった。特に、順風満帆かと思われたマテリアルが、何度も失敗を乗り越えてきたことや、社員教育はOJTではなく、頼りのOB技術者を活用しているということ。ニットーはここ数年で3社のM&A(合併・買収)を友好的に行い、社員を1名もリストラしなかったということ。
目から鱗(うろこ)の話が続く。あっという間の1時間半が終わった。会場の方々からも終止真剣な眼差しを感じたので、ほっとした。その後、議論は控え室に持ち越され、昨年同じ企画でパネラーだった大槇精機の大町亮介社長、全日本製造業コマ大戦をブレークさせたミナロの緑川賢司社長、そして、エアフィルターで世界展開をする前田シェルサービスの前田達宏社長も巻き込み、大変刺激的な話が飛び交う会になった。
扱っている製品も、地域も、お得意先も、所属団体も、共通点は無いが、なぜか頻繁に顔を会わせる。皆、ビジネスで成功しているというだけではなく、自社がというより、日本の製造業全体をどうするか?ということを考え、実際に行動を起こしている経営者たちだ。彼らと話していると、将来に不安は感じない。この熱気を全国に広げていきたい。
(日刊工業新聞 4月22日付オピニオン面に掲載)