第37回『スペイン訪問』

スペイン訪問 2012_01_30

スペインのマドリードに行ってきた。ウェブサイトの問い合わせを受けてから数カ月、メールでのやりとりを繰り返し、先々週、日本で由紀精密の工場を案内。そして、今回のマドリードへの訪問である。

 

お客さまはスペインを中心に活躍するアーティスト集団。現代美術の製作のほか、文化財保護のために高度なデジタル技術を駆使した芸術作品の復元も行う。世界中の有名美術館に彼らの手がけた作品が展示されている。今回、案内してくれたアーティストも東京大学教養学部で講演したことがあり、世界中で精力的に活動する。彼らは日本の製造技術に高い関心を持ち、完璧な芸術作品を作り上げるために完璧な技術を求めている。すでに何社かの日本メーカーとも取引があり、日本の部品が彼らの作品に貢献している。これは単純にとてもすばらしいことだと思う。

 

打ち合わせでは、私の英語のつたないプレゼンテーションを真剣に聞いてくれて、由紀精密の強みを瞬間的に把握し、彼らが技術的に困っている内容のなかから、由紀精密で解決できる可能性のあるものに関して深く議論することができた。

 

パリもそうだが、マドリードの建築物は素晴らしい。たくさんの歴史的建物がしっかりメンテナンスされて残り、町並みも美しい。打ち合わせの翌日、ゆっくり昇ってくる朝日の中、プラド美術館に向かい重い鞄(かばん)を片手に歩きながらいろいろ考えた。

 

やはり、日本の製造業はまだまだできることがたくさんある。ただ、それを見つけるには思ったよりたくさんの時間とアイデアが必要だ。零細中小企業がそこに時間を使うのは正直難しい。しかし、どこかで、他のことを犠牲にしてでも、自社の販路を開拓しないと、今後いっそう厳しい状況に追い込まれてしまう。

 

週末、マドリードからパリに戻り、メゾンドオブジェという世界最大規模の室内装飾の見本市を見に行った。日本からもさまざまな出展があり、古くは日本刀を作っていたという鍛冶屋さんが、デザイン的に素晴らしい燭台(しょくだい)を展示しているブースがあった。展示方法もとても美しい。彼らはパリで世界を相手にチャレンジしている。とても刺激を受けた。

 

すべての中小企業でこんなことができるか?とよく問われるが、できない理由には必ず解決方法がある。要するに、本気でそれをやろうとするかであろう。

 

ある社長さんと飲み会で「一緒にパリ航空ショーに出よう!」と約束してから3年たっていない。右も左もわからずウェブサイトで展示会の予約をしてから、あっという間に本気でフランスに会社を立ち上げる計画まで進んでいる。これからどうなるか正直わからない。でも後悔はしないと思う。全力を出し切ろう。

20120130

(日刊工業新聞 1月30日付オピニオン面に掲載)