第33回『ドイツ1泊3日』

ドイツ1泊3日 2011_12_26

ドイツのとある都市。中心街から少し離れたところにあるビジネスホテルでこの原稿を書いている。こちらの時間では深夜だが、日本との時差は8時間。時間の感覚はおかしくなっている。

 

あと数時間後にここから数キロ離れた企業を訪問し、その日のうちに日本へとんぼ返りすることになる。クリスマスシーズンで町並みは美しく彩られ、本来ならばじっくり観光をしたいところではあるが、今回に限っては全く時間の余裕がない。出張が決まったのは2日前。航空券、宿泊先の手配はインターネットであっけなく完了。直前でもなんとかなるものである。

 

なぜここまで急ぐ必要が出てきたのかはご想像にお任せする。海外の仕事をすると、こういうことが起こりうるということが身にしみてわかった。由紀精密も世界の企業を相手に仕事をするようになったのだと実感する。

 

今年は2月の米国アナハイムのMD&M(医療機器展)出展に始まり、6月のパリ航空ショー出展関連で3回の渡仏。これで最後かと思っていたら、師走の繁忙期に今回の出張となった。数年前までは、海外の取引など考えてもいなかった状態からこの変化である。

 

私は海外留学も海外勤務も経験が無い。学生時代から英語は極力避けてきた。ということで、多くの日本人と同様、語学は苦手である。自分にとってみても、数年前なら仕事で一人でヨーロッパへ行くなど、考えただけでもゾッとしていただろう。しかし、自分が英語が苦手なことと、会社としてグローバルにしなければならないことは全くの別問題。どんどん海外にチャレンジすると決めて、その必要性に応じて英会話を勉強したり、海外との直接取引を始めて、通貨の違い、税金の違い、商習慣の違いを実感してきた。

 

何事もそうかもしれないが、やってみるものである。やらないで恐れていたことが、実はたいしたことではないとわかったり、逆に、全く考えもしていなかったことがやってみて初めて問題となって出てくることもある。

 

由紀精密は20人に満たない零細企業である。確かに、海外出張一つとってもコストの面でも人員の面でも負担は大きい。しかし、小さい町工場だからといって、世界と取引してはいけないというルールはない。光る技術があれば、日本と同様、世界中に由紀精密を必要としてくれる会社があると確信し、小さい町工場に合った新しい取引の形態があることを信じてそれを模索している。

 

そろそろ朝が近づいてきた。こちらの朝は氷点下。朝食をしっかりと食べ、スーツの上に厚めのコートを来て、気を引き締めて客先へと向かおう。

20111226

(日刊工業新聞 12月26日付オピニオン面に掲載)