第18回『ウェブサイト営業術』

ウェブサイト営業術 2011_08_22

連載の第5回で、由紀精密には営業社員がいないという話をした。当社で非常に強力な営業マンとして活躍しているのは、ウェブサイトである。近年、中小企業でもウェブサイトを持つのは当たり前だが、営業の強力なツールとして活用しているところは案外少ない。

 

自社サイトには二つの役割がある。一つは自社のことを何かで知ったお客さまが、どんな会社か詳しく調べる場合。しっかりとしたサイトを持っていれば信頼につながり、さらに良く知ってもらうことで、お互いにメリットの出せる取引が生まれる。もう一つの役割は、お客さまが必要な技術と、その調達先をウェブで調べている場合。この場合、自社の存在は知らないことが前提になる。切削加工について、削りたい材料について、あるいは、どこがその仕事をできるか、などを調べている時、検索サイトでトップに自社サイトが表示されれば全く新しいつながりが生まれる。

 

この二つの役割を同時に満たすウェブサイトを作ればベストだが、由紀精密は戦略的に二つのサイトを別に構築した。それぞれのページで求められる内容が異なるからである。切削加工について知りたいお客さま向けに、自社のアピールではなく、切削加工について詳しく説明するサイトを用意した。

 

この作戦は大成功し、後者の役割を担う「切削加工.net」(http://sessaku.net)は、グーグルで「切削加工」を検索すると1位に表示される状態が続いている。SEO(検索エンジン最適化)対策にお金をかけないで長く1位に定着できるのは、サイトの内容を「切削加工」に絞り込んだ効果が出ている可能性が高い。このサイトはとても大きな効果を生み、新規顧客からの受注が毎週のように増えている。実際、この5年間で取引先の数は4倍以上に増加した。

 

ウェブでつながったお客さまは個人であったり、同業者であったりとのイメージがあるかもしれない。実際には、航空宇宙関連の大手企業であったり、非常に特殊で高度な技術を必要としているお客さまであったりと、とても良いめぐり合いができている。もちろん、仕事はウェブサイト上で取ってくるわけではなく、あくまでもウェブはきっかけで、その後に実際に会って、しっかりと打ち合わせを行う場合が多い。

 

また、近年は、ウェブサイトを作って検索されるのを待つだけではなく、フェイスブック、ツイッター等を使って積極的に営業活動を行っている会社も増えてきた。これから、ウェブを有効に使っている会社とそうでない会社の差が一層大きくなってくるだろう。もちろん技術力が前提だが、その技術を正確に伝える、売り込むことも必須である。

20110822

(日刊工業新聞 2011年8月22日付オピニオン面に掲載)